居住用不動産の譲渡の特例

居住用不動産の譲渡の3,000万円控除

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。

居住用不動産である土地・建物を譲渡した場合、譲渡所得税金額の計算において、課税所得から3,000万円が控除できます。

この特例は、所有期間や居住期間の要件はありませんので、多くの居住用不動産の譲渡に適用できます。

ただし、3年に1度しか利用できないものになっています。

また、この3000万円控除を利用してしまうと譲渡と一緒に居住用不動産を購入し、住宅ローン減税の制度を利用しようと考えている場合には、住宅ローン減税の制度が利用できなくなります。

 

居住用不動産の譲渡の軽減税率

 自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。

居住用不動産である土地・建物等を譲渡した年の1月1日において、所有期間が10年を超える場合には、譲渡所得税の税率が低くなります。

また、この居住用不動産の譲渡に関する軽減税率は、居住用不動産の譲渡の3,000万円控除の制度との併用が可能です。

 

税額の計算

6,000万円以下    課税長期譲渡所得金額×10%

6,000万円超        (課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円

※課税長期譲渡所得金額とは、次の算式で求めた金額です。

(土地建物を売った収入金額)-(取得費+譲渡費用)-特別控除=課税長期譲渡所得金額

※平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

 

特定居住用不動産の買換えの特例

特定のマイホーム(居住用財産)を、平成29年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。

例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。ただし、上記に記載した「居住用不動産の譲渡の3,000万円控除」・「居住用不動産の譲渡の軽減税率」の制度とは選択的な適用になります。

 

<利用の要件>

譲渡資産の要件

1 所有期間が譲渡する年の1月1日において10年超であること

2 居住期間が10年以上であること

3 売却代金が1億円以下であること

 

<買換え不動産の要件>

1 買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること

2 買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること

3 売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日までとすること

4 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

 

<特例の効果>

譲渡不動産の価額≦買換え不動産の価額の場合

譲渡がなかったものとされます。

 

譲渡不動産の価額>買換え不動産の価額の場合

譲渡不動産の価額と買換え不動産の価額の差額部分についてのみ譲渡があったものとされます。

 

居住用不動産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

マイホームを売却して、新たにマイホームを購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、一定期間内に買換えにより居住用不動産を住宅ローンを利用して取得すれば、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。

さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰越控除することができます。

 

<利用の要件>

譲渡不動産の要件

所有期間が譲渡した年の1月1日において5年を超えるものであること

 

<買換え不動産の要件>

1 譲渡した年の前年1月1日から譲渡した年の翌年12月31日までに取得すること

2 居住用部分の床面積が50㎡以上であること

3 取得日から翌年12月31日までに居住すること(見込みも可)

4 損失の繰越控除をする各年末に償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること

 

<効果>

譲渡損失とほかの取得との損益通算が可能になります。さらに、損益通算後の損失金額を翌年以降に3年間繰り越せるようになります。

また、住宅ローン減税の制度と併せて利用することも可能です。

 

<注意点>

1 譲渡損失のうち500㎡を超える譲渡損失の金額は繰越控除が適用されません。

2 繰越控除は、合計所得3,000万円以下の年のみ適用されます。

 

特定居住用不動産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

居住用不動産を譲渡して損失した場合、買換えをしなくても、譲渡不動産の譲渡対価を上回る住宅ローンの残高があれば、その譲渡損失の一部について損益通算及び繰越控除ができます。

 

<利用の要件>

1 所有期間が譲渡した年の1月1日において5年超であること

2 売買契約日の前日等において住宅ローンの残高があること

 

<効果>

譲渡損失とほかの取得との損益通算が可能となります。さらに、損益通算後の損失金額を翌年以降の3年間繰り越すことができます。

 

<注意点>

1 譲渡損失の金額は、「住宅ローンの残高‐譲渡対価」が限度となります。

2 繰越控除は、合計所得の3,000万円以下の年しか適用されません。