根抵当権設定登記

住宅等の不動産購入時に融資を利用する場合は、抵当権設定登記ではなく根抵当権設定登記となります。

 

根抵当権とは

根抵当権とは、将来借り入れる可能性のある分も含めて、不特定の債権の担保としてあらかじめ設定しておく抵当権のことをいいます。

抵当権の一種であり、法律上根抵当権の規定にないことは抵当権と同様に扱います。

 

根抵当権と抵当権の違い

根抵当権と抵当権の違いは借りる額が決定しているかいないかです。根抵当権の場合は極度額に応じた抵当権が設定されます。

 

被担保債権との附従性

抵当権は、特住宅ローンなどでお金を借りたときに、家と土地をその借金の担保として確保しておくためのものです。

したがって、その債権が全て完済されれば、被担保債権との附従性により、債権と一緒に抵当権も消滅することになります。

 

事例:平成20年3月1日付に1000万円の住宅ローンを組んで、その日に抵当権設定契約を行った場合に、平成27年3月1日に住宅ローンを全額返済したとします。

この場合には、平成27年3月1日付で住宅ローンの債権が消滅したと同時に、担保権である抵当権も消滅します。

 

一方、根抵当権の場合には、「不特定の債権」を目的とする担保権となります。

銀行がお金を貸す上限の金額を決めて、その金額の範囲内なら何度借りたり返したりしても、抵当権は設定したり抹消したりせずに、抵当権が抹消されないことになります。

 

上記の抵当権と同じ事例で、抵当権の代わりに根抵当権を設定した場合には、平成27年3月1日付で住宅ローンの債権が消滅しても、担保権である根抵当権も消滅しません。

 

被担保債権との随伴性

抵当権は、特定債権を目的とした担保権ですので、被担保債権の随伴性により、債権が移転した場合には、抵当権も同時に移転します。

 

例えば、平成27年2月1日付の住宅ローンを目的とした抵当権が設定された場合に、平成27年3月1日に住宅ローン債権が譲渡によって移転されると、被担保債権の随伴性により、同時に抵当権も移転することになります。

 

一方、根抵当権の場合には、被担保債権との随伴性はないので、被担保債権が譲渡されても根抵当権は移転することはありません。

 

元本の確定

元本確定とは根抵当権をやめる場合、いくらお金を返済する義務が残っているのか確定させることです。

元本確定後の根抵当権は、抵当権と同様に被担保債権との附従性・随伴性がある担保権となり、被担保債権を全額返済すれば、根抵当権も消滅します。

 

根抵当権の主な元本確定事由は以下の通りになります。

① 元本の確定期日の到来(初めからそういう契約をしている)

② 根抵当権者が元本の確定請求をした時(確定期日が決まっていない場合)

③ 確定期日がなく根抵当権がはじまって3年を経過してから、根抵当権設定者が元本の確定請求をした時

④ 根抵当権者が競売の申し立てをした時

⑤ 根抵当権者が差し押さえをした時

⑥ 第3者が競売や差し押さえをしたことを、根抵当権者が知って2週間が経過した時

⑦ 債務者または根抵当権設定者が破産した時

⑧ 根抵当権者または債務者に相続が開始し、6ヶ月以内に指定根抵当権者または指定債務者の登記をしなかった時

⑨ 根抵当権者または債務者に合併が生じ、根抵当権設定者が元本の確定請求をした時

⑩ 根抵当権者または債務者に会社分割が生じ、根抵当権設定者が元本の確定請求をした時

 

根抵当権の登記事項

根抵当権の抵当権と上記のとおりのような違いから登記事項も変わってきます。

主な登記事項については次のとおりです。

 

極度額

抵当権でいう「債権額」に代わるものであり、担保につける上限金額です。

抵当権は被担保債権が特定されているので、債権額を特定することが可能です。

根抵当権の場合には、根抵当権設定後の取引から生じる債権も根抵当権の被担保債権となるので、設定時には債権額を特定ができません。代わりに「極度額」という担保の限度額を決めておく必要があります。

 

債権の範囲

根抵当権は、不特定多数の債権を担保する権利です。

この不特定多数の債権を範囲として登記します。

 

債権の範囲としては主に次のとおり区分されます。

 

1 一定の範囲に属する不特定債権

① 根抵当権者と債務者との特定の継続的取引契約によって生じる債権

例 「年月日当座貸越契約」「年月日手形貸付契約」

 

② 根抵当権者と債務者との一定の種類の取引によって生じる債権

例 「金銭消費貸借」「銀行取引」

 

2 特定の原因に基づき、根抵当権者と債務者との間に継続して生じる債権

例 「甲工場からの清酒移出による酒税債権」

 

3 債務者との取引によらないで取得する手形上、小切手又は電子記録債権上の請求権

例 「手形債権」「小切手債権」

 

4 特定債権(特定債権のみは不可)

例 「年月日売買代金」